ゲイな彼と札束

田舎の小さな空港だ。

マモルが手荷物検査を受ける前にゲート前で張っていれば、会える可能性は高い。

問題は時間だけだ。

どうかマモルがゲートを通過する前に到着しますように……。

バスが空港に到着したのは12時25分過ぎだった。

あたしはバスを慎重に降りるなり、再び松葉杖をガツガツ突いて空港に飛び込む。

ゲートは2階。

階段を駆け上がりたいが、この体では無理だ。

大人しくエスカレーターで上がり、出発ゲートの前に到着した。

12時30分。

マモルはもうここを通過しただろうか。 

壁がガラス張りになっているため、搭乗ロビーはよく見えるが、東京行きの搭乗口は少し遠くてここからはよく見えない。

行き交う人々を見回すが、マモルらしき人物は見当たらない。

待っている間に、時間は12時40分を経過した。

やはりもう搭乗口の方へ行ってしまったのか……。

「東京行きのお客様へ、優先搭乗のご案内を申し上げます……」

ああ、搭乗が始まってしまった。

ここまでか……。

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