ゲイな彼と札束



羽田空港に到着。

時刻はもうすぐ帰宅ラッシュだ。

東京は地元より日没が早い。

あたりは暗くなり始めている。

さすがに松葉杖で満員電車に乗る勇気はなく、地元での反省もあり、タクシーに乗った。

高層ビルだらけでトゲトゲした東京の景色は暗くなると地上から見ても美しいが、今はどうでもいい。

レインボーブリッジや東京タワーにも感動できない。

首都高速ではしばらく渋滞にはまってイライラした。

マモルはもう自宅に到着しただろうか。

東京は地元より少し寒い。

コルセットでガッチリガードされているが、さすがにスウェットだけじゃキツい。

だけど……きっと。

マンションに着いたら、マモルがまた温かいコーヒーを入れてくれる。

あたしの心身を温めてくれる。

中野まで、もう少し。

あいつに会えるまで、もう少しだ。

タクシーを降りるなり、あたしは懐かしいマンションを見上げた。

自動ドアを抜けて、オートロックの前に立つ。

ロックナンバーは今でも覚えている。

難なくロックを解除し、エレベーターに乗り込む。

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