ゲイな彼と札束

あたしは暖を取るため、ギブスの脚をかばいながら地べたに座り、腕を擦った。

腕を袖から抜いて胴体と同じところに入れると寒くはなくなった。

しばらくそうしていると、冷たいコンクリート越しに携帯の振動が。

バッグから赤い機械を取り出し、ディスプレイを確認する。

ヒロキからだ。

「もしもし」

『サエ、今どこおるん? 家おらんけぇビックリしたぞ』

何かあったら報告するよう言われていたのに、何も言わずここまで来てしまった。

「ああ、ごめん。勢いで出てきたけぇ連絡すんの忘れちょった」

『勢い? お前、今どこおるん?』

「……東京」

『はあっ? 東京?』

驚くのも無理はない。

あたしは今朝まで入院していたのだ。

「うん。ごめん……」

『マジか……あーもう。何なんお前ら』

「お前“ら”って何よ」

不可解な言葉のチョイスに首を捻る。

ヒロキは冷たい口調で告げた。

『俺今、加藤護って男といっしょにおる』

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