ゲイな彼と札束
振ったのはマモルの方なのに。
彼女であるあたしの誘惑を、あっさりスルーしたくせに。
「何だよ! 2ヶ月もほったらかしにしてたくせに!」
『ごめんね。俺、サエに嫌われたんだと思って』
「はぁ? ちゃんと手紙書いただろうが」
大好きだって、ちゃんと書いた。
『うん。でも過去形だったし』
確かに手紙には「大好きでした」と書いた。
でも嫌いだなんてどこにも書いてない。
「お前が誤解しただけだろ。人のせいにしてんじゃねーよ」
『ごめん。でもね……』
「男が言い訳すんな!」
泣きながら何を言ってもカッコつかない。
『ごめんって』
マモルは優しい声であたしを宥めてくれる。
早くマモルの顔が見たい。
温もりを感じたい。
「……さと……って……いよ……」
『え? なに?』
詰まりに詰まったあたしの心の叫びは、一度じゃちゃんと伝わらなかった。
息をつき、もう一度。
今度はちゃんと伝わるように。
「さっさと帰って来いよ!」
この扉の向こうの、あたしたちの家に。