ゲイな彼と札束
トイレも風呂も、中に置いてあるボディーソープやシャンプーも、あの頃と何も変わっていない。
だけど寝室のベッドは、タオルケットではなく、羽毛の掛け布団になっていた。
そりゃそうだ。
この時期にタオルケットは寒すぎる。
ベッドメイクをおろそかにしているのか、掛け布団はくしゃっと左側だけめくれている。
マモルの寝る位置も、あの頃のままのようだ。
右にはあたしもジョージもいないのに、左側に寝ているのだろう。
あたしはマモルの寝る左側へ片足でダイブした。
そして大後悔。
肋骨のことをすっかり忘れていた。
しばらくうずくまって悶絶する。
地元のアパートで使っていた安いベッドとは比べ物にならない寝心地の良さにゆっくり癒される。
ジョージのチョイスに感謝した。
松島ジョージこと、高田真之介。
あの頃は憎くて仕方なかったけど、今はまあまあ感謝している。
苦学生だったらしいマモルがこのレベルで生活できるのは、ジョージのおかげだ。
代償に夢と愛を失ったけれど、路頭に迷うことなく生きている。
慎重にあたしが眠っていた場所へ動く。
目を閉じて深呼吸すると、ここからもマモルの匂いがした。
そう、きっと。
あの頃のあたしとマモルは、同じ匂いがしていた。