ゲイな彼と札束
なるほど。
高田真之介ではなく、松島ジョージとして。
ジョージ関係で電話が来るときはいつも女の声だった。
花巻とかいうマネージャーだ。
「それで?」
「高田真之介としては、何も解決していない。解決といっても謝ることくらいしかできないんだけど。そんな当然のことすら許されない環境にあったから……」
少しだけ安心した。
ジョージは女との生活や自分の保身のために、自分の意思でマモルを金で片付けたのだと思っていたが、違ったようだ。
マモルの生活の支援がジョージの誠意であるというのは、本当らしい。
「芸能界って冷酷な世界なんだな」
「そうだね。正しくは所属している事務所が、かな。良くも悪くも、大きな金が動く世界だから。そこから奪うことを生業とする輩がたくさんいるから、冷酷なくらいでないと、やってけないんだよ」
あたしなんかじゃ計り知れない苦労があるんだろうけど、そんなの知るかよ。
どうだっていい。
マモルが傷ついた。
そのことに変わりはない。
あたしは先に短くなったタバコの火を落とし、マモルのカップで砂糖とミルクの入ったコーヒーをすすった。
ジョージも少し遅れて灰皿を使う。
「マモルはいつ帰ってくるの?」
「明日の朝イチの飛行機に乗るらしいけど」
「待たせてもらえないかな」
……そうきたか。
こいつは関係者の目を盗んでやっとここへ来られたのだから、このチャンスを逃す手はない。
でも。
「あんたを寝かせる場所はないけど?」