ゲイな彼と札束
この部屋にはベッド以外に寝具はない。
こいつが買ったものとはいえ、誰が入れてやるか。
あれはもう、あたしとマモルのベッドなんだ。
「俺はここでいいよ」
ジョージはそう言って微笑み、ソファーをポンポン叩く。
まぁ、それならいいか。
身長が180センチはある彼には、少し小さい気がするが。
「知ってた? このソファー、ベッドになるんだよ」
「は?」
知らなかった。
ソファーベッドって、もっとソファーとしては不自然な形をしているものではないのか。
ジョージは立ち上がり、ソファーの背もたれを前へ傾ける。
カチッと音がして、座る部分がスライドする。
背もたれは地面へと落ちていった。
サイドも同じように倒すと、形はいびつだが、ジョージでもはみ出さないくらいのベッドマットに。
唖然としているあたしに、ジョージは得意気に笑ってみせた。
「便利でしょ」
ちくしょう、美しい。
映画を見ているようだ。
カッコイイな。
見た目だけは。
「毛布持ってくる」
あたしは寝室のクローゼットに毛布があるのを思い出してゆっくり立ち上がった。
するとすぐさまジョージがあたしを止めた。
「俺がやるよ。ケガしてるでしょ。大事にしないと」