ゲイな彼と札束
ずっと酷い男だと思っていた。
マモルを傷つけた大悪党だと。
今でもそう思っている。
だからこんなふうに、普通にいいやつだと知りたくなかった。
芸能人であることを鼻にかけて偉そうに振る舞ってくれたら、心の底から嫌うことができるのに。
あたしみたいな女にも微笑みかけてくれて、ケガをいたわるために気を使ってくれるような男でなければ、ずっと悪口だけ言ってられたのに。
「シャワーも借りるね」
「好きにしなよ」
クローゼットから毛布を取り出すためだけに寝室に入ってきたジョージは、マモルと愛し合った思い出のベッドには目もくれなかった。
きっとあたしに不快な思いをさせないためだ。
役者である彼は、視線を向けるだけで周囲に未練を感じさせることを知っている。
あたしは毛布を持ったジョージが寝室から出るなり、すぐにドアを閉めた。
そしてベッドに潜り込む。
ジョージはいつかこの部屋を訪ねてくる。
ずっとそんな気はしていた。
どうしてそれがマモルのいない今夜になったのか。
ジョージはジョージでツイていない男だ。
ジョージに会ったらボロクソに文句を言ってやろうと思っていたのに、実際に会って話してみると、そんな気にすらなれなかった自分も情けない。