ゲイな彼と札束
「――サエ……」
寝心地の良いこのベッドでは、ついつい寝過ぎてしまう。
「……サエってば」
暖かくて、程よく硬くて。
マモルの匂いがする。
「ねぇ、サエ。起きて」
カーテンの隙間から淡く光が差し込むのも心地よくて……って。
今日はやけに眩しいな。
「起きないなら、チューするよ」
「ん……?」
チュー?
額に何か温かいものが触れたのを感じる。
その時だけあたりが暗くなって、またすぐに明るくなる。
少しだけ意識を取り戻したあたしは、いつもより高い光度から逃れようと掛け布団に潜り込んだ。
その態勢のせいでビリッと肋骨が痛み、意思とは逆にまどろみは遠退いていく。
「いててて……」
「サエ、痛むの?」
焦った声と同時に布団がまくられ、11月の朝の冷たい空気が肌に触れた。
完全に目覚めたあたしは、顔にかかった影の正体を見て凝固する。
「ただいま」
「マモル……」
2か月ぶりのマモルは、変わらず優しい笑顔だった。