ゲイな彼と札束
もしかして、別れた女はあたしと似たタイプなのだろうか。
タバコだって同じだし。
マモルはふとこちらを向き、少し体を離してあたしを眺めた。
「それにしても、こんなことする男がいるなんて」
そっと腕のアザに触れる。
「別に、慣れてるし」
親父に始まり、あたしはことごとく殴られて生きてきた。
慣れているからといって平気というわけではないけれど、転がり込む形で住まわせてもらって、タダで飯まで食わせてもらっているのだから、多少の我慢は必要だった。
「俺はそんなことしないから、行くとこないならしばらくここにいなよ」
痛めつけられることが当たり前になっていたあたしは、優しくされると疑う癖がある。
こいつの言葉の裏には何かあるんじゃないか、と。
これまでの人生、優しい言葉を信じては裏切られてばかりだった。