ゲイな彼と札束

マモルの細い腕に上体を起こされると、可動範囲が広がったあたしの腕は、吸い付くようにマモルに巻き付いた。

力いっぱい抱き締める。

ヒビの入った肋骨が泣き叫ぼうが、ポッキリ折れてしまおうが、マモルを全身で感じることを優先したかった。

実際はコルセットに守られているから、そんなには痛まなかったけれど。

「サエ、苦しいって」

マモルが笑いながら抱き返す。

ケガしてるし、上下ダサいスウェットだし、寝起きだし。

女としては0点以下。

好きな男に会うには酷すぎる状態だ。

本来なら、もっとちゃんと早起きして、顔くらい洗っておくべきだった。

だけど、いい。

こんなあたしでも、マモルが優しくしてくれるから。

あたしはここでやっと来客のことを思い出して顔を上げた。

「マモル、ソファーにジョージが……」

「うん。知ってる。今コーヒー飲んでるよ」

あたしの知らない間に顔を合わせたのか……。

「話は?」

「まだ。俺はシンさんよりサエに会いたかったから、挨拶だけしてすぐここに来た」

肋骨を労り優しく抱き締めてくれる温もりに、あたしは目覚めたばかりなのに目頭がツンと熱くなった。



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