ゲイな彼と札束
「サエにお土産があるんだ」
「お土産?」
「うん。リビングに行こう」
「えっ?」
リビングにはまだジョージがいるのに。
あたしはマモルの捨て犬顔も、気持ちをぶり返してときめく顔も見たくない。
顔をしかめ拒否する姿勢を示すと、マモルはチュッと額にキスをした。
この感覚。
なんだか、さっきも似たような感覚がしたような気がする。
「シンさんと話をする間、サエには隣にいてほしい」
「なんで?」
あたしなんか、何の役にも立たないのに。
「俺一人だと、たぶん泣いちゃうからさ」
「子供かよ」
「不思議なことに、俺ってサエがいると強くなれるんだよね」
マモルは目を伏せてあたしの手を握る。
冷えた指先からじわじわと熱が入り込む。
「あたしはマモルと出会って弱くなった」
「それでいいんだよ。俺が守るんだし」
あたしの手の大きさや形、感触を確かめるように、見つめて、撫でて、なぞる。
マモルの手は指が細長い。
それでも男っぽい手なのは、爪が横長だからだろうか。
「俺は今まで甘えて守られてばっかりだったから、シンさんきっと心配してるんだ。俺にも守る対象ができたって。強くなったって。もう大丈夫だって、伝えなきゃね」