ゲイな彼と札束
ある男には運び屋みたいなことをやらされた。
またある男には怪しい会社に売られそうになった。
またまたある男には……ああ、もうやめよう。
思い出すと、虚しくなる。
十分に学んできた。
あたしは愛されない。
親にさえ愛されなかったあたしは、その術を知らないのだ。
だから乱暴に抱かれたって我慢するし、何か手伝えることがあるなら協力する。
その代わりに暖かい寝床と生きていけるだけの飯が得られるし、風呂にだって入れる。
服を買ってもらえることもあるし、小遣いをもらえることだってあるのだ。
あたしはこの三年間、そうやって生き延びてきた。
マモルにどんな思惑があってあたしを連れ込んだのかはどうでもいい。
眠れる場所を提供してくれるのなら、協力できることはしてやるさ。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
とりあえず傷とアザが治るまで世話になって、様子を見よう。
身に危険が及ぶようなら出ていけばいい。
その頃には、こいつの失恋の傷だって癒えているだろう。
それまでは、宿代としてあたしが身代わりくらいしてやるよ。