ゲイな彼と札束

あたしのいない間に職場視察までしておいて。

金だけドアノブに引っ掛けて、結局あたしには会わなかったくせに。

「だって、病室で男と仲良くしてたから。新しい彼氏かと思って」

「病室まで来たのかよ! 来たなら顔見せろよ! つーか男って……ああ、ヒロキか」

「2ヶ月も経てば彼氏くらいできるよなって思ったし、ヒロキ君、サエの好きそうなタイプだったし。空気読んだっていうか、邪魔しちゃいけないって思って」

ヘタレめ。

そんなんじゃ、何のためにわざわざ東京から来たのかわからない。

男がいたからって、怖じ気づいてんじゃねーよ。

乗り込むくらいの根性見せろよ。

「別に、ヒロキはただの同級生だし」

「うん、昨日聞いた。部屋の前にいたら殴られちゃったけど」

そう言って軽く左頬に触れたマモル。

ヒロキがちゃんと手加減したからか、腫れたりはしていない。

「つーかお前、1時の飛行機予約してたんだろ? ママに聞いた」

「うん。でもやっぱりサエに会わないと後悔すると思ったから、飛行機キャンセルして12時40分空港発のバスで戻った」

も、戻った……?


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