ゲイな彼と札束
「はぁ?」
自分でも驚くほど気の抜けた声が出た。
空港行きのバスは往復運転する。
単純に考えると、マモルはあたしが降りたバスの折り返し運転でうちに向かったことになる。
あたしたちは同じバスで、見事に入れ違ったというわけだ。
空港のバス停は降車と乗車で場所が異なるが、まさか乗車口にいるとは思わなかったあたしは、ひたすらゲートに入っていく人ばかりを気にしていた。
「なんか、映画みたいな話だな」
こうして今再会できているのは奇跡かもしれない。
「ほんとだね。俺たち、やっぱ運命の相手なんだよ」
運命とか簡単に言うな。
世の中そんなうまい具合にはできていない。
マモルはゲイなのだから、あたしなんかと運命で結ばれてはいけない。
「アホか。ゲイのくせに」
マモルには今度こそ幸せな恋愛をしてほしい。
浮気なんかしないいい人と、愛し愛されて暮らしてほしい。
「うん。俺はゲイだけど、サエのこと、愛してる」