ゲイな彼と札束

こいつ、今、愛してるって言った?

「……は?」

「恋なんてしなくても、愛することはできるよ。俺がサエに対する感情は、愛だってこと」

あたしは独自の思考で話を展開するマモルについていけない。

「ちょっと待て。全然意味わからん」

男女の場合、恋の延長線上に愛が存在していると考えているあたしには、マモルの言っている意味がなかなか理解できない。

芽吹いた恋を大事に育てて、愛を育み、うまくいけば花が咲き、実がなって種ができる。

そういうものだと思っていた。

恋なんかしなくてもって、どういうことだよ。

そもそも恋が芽生えないと、愛も育まれないのでは?

そうではないとしたら、あたしがマモルに対して抱いている感情は?

「恋なんて、持って3年だっていうじゃない。その分を飛ばしたと思えばいい」

「飛ばすって、めちゃくちゃだな」

「俺は長くて3年の恋を捨てて、サエとの60年を選ぶ。ずっと一緒に暮らしていきたい」

「ずっとって……」

何だかプロポーズされているみたいだ。

「俺、ゲイだから。そう思える“女”はこの先絶対サエしかいないと思う。一生に一度のチャンスだと思うんだよ」

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