ゲイな彼と札束
ジョージは来たときのようにサングラスをかけ、人目を気にしながらコソコソと帰っていった。
あたしとマモルは玄関で、
「じゃあ、いつかまた会う日まで」
と言って送り出した。
きっとジョージがこの部屋を訪れることは二度とない。
そして高い確率で、二度と会うこともないだろう。
ただあたしたちは、彼をテレビやスクリーンでいつでも見ることができる。
いつでも見ることができるくらい、活躍していれば、の話だけど。
ばいばい、ジョージ。
ジョージと過ごした数時間は、まるでドラマを見ているようだった。
リビングに戻ると、時刻はそろそろ午前11時になろうとしていた。
久々にマモルと二人だ。
大きな問題がひとつ片が付いてスッキリしたはずなのに、恥ずかしいやら気まずいやら、別のモヤモヤに襲ってくる。
だって「愛してる」なんて言われてしまったのだ。
どんな顔をしていいかわからない。
間が持たず、マモルが土産にくれたカップのコーヒーをすすってみる。
温くなっていて、美味しくなくなっている。
「淹れ直すね」
顔に出ていたのか、マモルはテーブルのカップを持っていってしまった。