ゲイな彼と札束
コーヒーが少し温くなり、飲みやすくなった頃。
マモルがふとあたしの髪に触れた。
優しいタッチにゾクッとした。
背中の奥の方から一気に鳥肌が立つ。
そのまま抜けてしまうほど強く引っ張られるのではないか。
あるいは首に巻き付けられて絞められるのではないか……。
今までの経験上、そういうことが脳裏をよぎってハラハラする。
生きるために、あたしは常に男の前では気を張っていなければならない。
「大丈夫。怖がらないで。ゴミがついてただけだから」
マモルは優しくそう言って、スーッとそのゴミを取り灰皿にパラッと捨てた。
「別に怖がってねーし……」
「体、強ばってたよ」
「ビックリしただけだし」
マモルは拾ってきた猫をなだめるようにあたしに優しくする。
ちゃんとリラックスしてるとアピールしたくて、あたしは二本目のタバコに火をつけた。