ゲイな彼と札束
「なぁサエ~」
道具を片付けながらあたしを呼ぶヒロキ。
表情がやや硬い。
「ほんとにあいつでいいん?」
あいつとは無論、マモルのことだ。
「うん」
ヒロキは昔からマモルのような優男が嫌いだったから、納得がいかないようだ。
「本物のホモなんやろ?」
「今は微妙」
「微妙?」
「うん。あたし愛されてるし」
マモルからの返信を見せると、ヒロキは面白くなさそうにタバコに火をつけた。
返信メールの文面は、こうだ。
〈え? 人の前で脱いだの? 下着外れてんじゃん。ダメでしょ!〉
一緒に風呂に入った時はあれだけ食いついたのに、鳳凰にはノーコメントだった。
「ったく、お前も変わったな。あんなショボい男に付いていくっち、元ヤンのくせにどうかしとるわ」
「元ヤンは関係ないやんか」
「元ヤンの彼氏は俺みたいな元ヤンやって相場が決まっちょるやろ」
「まぁ、今まではそうやったけどな」
そういう男の方が、気が合うと思った。
あたしの気持ちをわかってくれるのではないかと思った。