ゲイな彼と札束




ピーンポーン……

呼び鈴の音で目が覚めた。

トタトタ足音がして、ドアの奥で男の声がする。

ドアを開けてリビングに出ると、業者の男が二人、大きなテレビを設置していた。

電機屋で出会ったときにマモルが見ていた、あの大きな液晶テレビだ。

「あ、サエ。おはよう」

「おはよ」

マモルは小型家電の梱包を解いている。

リビングに生活感が生まれていく。

あたしには特に手伝えることもなく、ぼんやり男たちの作業を眺めた。

テレビ、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、ブルーレイレコーダーなど。

箱や発泡スチロールで、リビングダイニングがスゴいことになっている。

男たちは大型家電の設置と梱包材の撤去を慣れたようにサクサク終わらせ、愛想良く礼を言って去っていった。

「なんか、一気に雰囲気変わったな」

「総額100万の家電を入れたからね」

なるほど、使った200万のうちの100万が家電というわけか。

あたしはソファーに腰掛けてテレビの前で仁王立ちするマモルを眺める。

「テレビ、デカすぎ」

「50インチだからね」

マモルはリモコンをかざし、片手は腰のままスイッチオン。

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