ゲイな彼と札束
携帯電話
一日中マモルと過ごす日々が続いた。
ある日はずっとソファーでテレビにかじりつき、またある日はずっとベッドでゴロゴロする。
こんなに近くにいるのに、マモルは必要があるとき以外、決してあたしに触れてこない。
男といるのに欲の捌け口にされないなんて、初めての経験だから変な感じがする。
他の人間と関わっていないからか、不思議なことに、タイプじゃないはずのこいつがやけにイイ男に見えてきた。
横顔がキレイだ。
寝顔が可愛らしい。
中性的だけど、手や足、腕や脚、広い背中や伸びるヒゲから男らしさを感じる。
欲求不満を感じだしたのは、あたしの方だった。
こっちから望んだって無理だと言われた。
ゲイって女には欲情しないのか?
もし本当にそうなら、あたしの不満はどう解消しろと?
つーかマモルは溜まらないのだろうか。
あたしの顔の腫れや新しいアザはだいぶ良くなってきた。
そろそろこいつとの生活も終わりかなという頃、マモルはテーブルに放置していた300万を再びポンと手渡してきた。
「これで必要なもの買ってきなよ」
「え?」
「服とか下着とか、女の子だから化粧品とか。何も持ってないんでしょ?」