ゲイな彼と札束
こいつの元彼は一体何者なんだ。
金持ちだからって何様だ。
「別れたお前が誰と付き合おうが、そいつにはもう関係ないじゃんか」
「いや、そういうわけにはいかなくて」
「別れたのに調査? 初めて聞いたぞ、そんなの」
付き合っている間の浮気調査ならわかるけど。
マモルは噛みつくあたしをなだめるようにソファーに座らせる。
そしていつかテーブルに散乱していた書類のひとつを見せてきた。
念書と題されたそれは、書いてある言葉が難しくてあたしにはよくわからない。
「何これ」
「契約書みたいなものだよ」
「そんなの見りゃわかるっつーの」
甲:高田真之介
乙:加藤護
名前の欄にはそう書かれている。
高田真之介というのは、おそらくマモルの元彼だ。
「これはね、500万を渡す代わりに、彼が俺と付き合っていたことを隠すのに協力するっていう念書なんだ」