ゲイな彼と札束

マモルの真剣な表情。

やけに難しい言葉で書かれた書類。

そして本物の札束。

付き合ってくださいって、何だよ、それ。

これまでたくさんの男と付き合ってきたけど、そんなちゃんとした言葉、初めて言われた。

「……ハハッ」

思わず笑いが漏れる。

「笑わないでよ。ここはドキドキするとこでしょ」

「ドキドキって……ハハッ」

ドキッとしたから笑ってんだバカ野郎。

あたしのこと好きでも何でもないくせに、適当なこと言いやがって。

ちょっと嬉しい自分がアホみたい。

「俺、女に告白したの初めてなのに」

男にはあるってことかよ。

余計に笑える。

「心配しなくても、彼女のフリくらいやるよ」

「ほんと? よかった」

「お望みなら夜の相手だってしてやるけど?」

「あ、それはいい」

あっさり断るなよ、薄情者。

お預け食らってんのはノーマルで健康なあたしなんだっつーの。

ほんと、これじゃどっちが男でどっちが女なんだかわかったもんじゃない。

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