ゲイな彼と札束

駅ビルを抜けると8月のクソ暑い日差しが傷に沁みる。

少し歩くとふわっと涼しい空気がサンダルの足をかすめた。

電機屋だ。

少しだけ涼むつもりで中に入る。

訝しげな表情でこちらを見る店員。

あたしはさっきと同じように威嚇した。

目の前には大型の液晶テレビが値札と共にドーンと存在をアピールしている。

大画面が映すは人気俳優、松島ジョージの結婚会見。

無数にたかれるフラッシュの中、はにかみながら相手との馴れ初めを語っている。

「あーあ、幸せそう」

思いきり嫌な顔でそう呟いたとき。

まったく同じ呟きが左隣から聞こえた。

必然的に顔を合わせる。

そこに立っていたのは、目が虚ろで見るからに不幸そうな、まるであたしのような男だった。


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