ゲイな彼と札束

「いいじゃん。俺たち一応本物のカップルだし?」

「本物って……」

お前ゲイだろ。

カップルは表向きだけだろ。

マモルは再びあたしの手を取り、照れたように笑う。

「なんか、甘酸っぱい気分だね」

「はぁっ? お前、男専門じゃん」

「そうなんだけど、関係ないよ。女の子と手を繋ぐなんて久々で、嬉しい」

「あっそ」

……やっぱりあたしにゲイを理解するのは難しい。

でもそうか。

男が好きだからって、マモルは女が嫌いってわけじゃないんだな。

こうして手を繋いでいれば、他人にはラブラブカップルに見えるのだろうか。

実は男と手を繋いで歩くなんて、あたしだって初めてだったりする。

なんか、想像していたのと違う。

全然甘酸っぱくない。

絶対に口に出したりしないけど、ド甘い。

暑いのに、手と手が触れ合っているだけで心地いい。

こんな感覚は初めてだ。

なんか、愛されてるって勘違いしてしまいそう……。

「サエだって照れてんじゃん」

「あたしだって男専門だからね」

「あはは、そっか」

バカ野郎。

あたしの嫌味に気づけよ。

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