ゲイな彼と札束
タケシはあたしと視線を合わせるようにしゃがみ込み、スッとサングラスを頭へ上げた。
好きだった厳つめの顔。
今ではもう恐怖の対象でしかない。
逃げ出したい。
なのに体が動かない。
「驚いたぜ。まさかこんなとこで再会するなんてなぁ」
ガツッと片手で顔を掴まれた。
「ひっ……!」
タケシが立ち上がるのに合わせて、あたしも立たざるをえなくなる。
「急に出てったから心配したぞ」
心配?
嘘つくんじゃねーよ。
さんざん殴っといて笑わせんな。
あたしはタケシを睨み、口は開かなかった。
周りもあたしたちの雰囲気に気が付いたのか、喫煙所からはちらほら人が去っている。
「おい、コラ。何とか言えよ」
顔を掴む手に力が籠もってきた。
顎の筋肉にめり込む指が痛い。
「……手、放せよ」
「あぁ?」
「放せっつってんだよ!」
あたしは叫んで顔を掴む手を剥がそうとした。