ゲイな彼と札束
冷静にタケシの動きを分析できたのは、自分の中で諦めがついたからだ。
もう大人なのに、始末の悪い男。
今更だが、あたしはなぜこんな男についていったのだろう。
生きるためとはいえ、見る目がない。
さっきからタケシが何か言っているが、全然頭の中に入ってこない。
あたしは余力が少ない中、歯を食いしばるタイミングばかりを図っていた。
ああ、頭痛い。
夏のアスファルトって熱い。
触れてる部分が火傷しそうだ。
やるならとっとと終わらせてくれよ。
マモルが戻る前に。
こんなとこ見られたら、心配をかけてしまう。
乱暴に胸ぐらを掴まれたあたしのTシャツは胸元が伸びて、周囲からは下着が見えている。
サンダルは片方が脱げて、マモルが買ってくれた服の袋の方に転がっていた。
ダッセーな。
あたしも、タケシも。
「ははっ」
笑いを漏らすと、直後に左頬に痛みを感じた。
バチンという音と衝撃の感じから、拳ではなく平手だとわかる。
思ったほどの痛みはなかったけど、頭はクラクラする。