ゲイな彼と札束

殴られついでに周りへ目をやると、近くを通る人は見て見ぬふりをしているが、少し離れたところに数人の野次馬がいる。

こんなの、とんだ見せ物だ。

再会してまだ1~2分なのに。

もう一度タケシに視線を戻すと、胸を掴んでいた手が急に離れた。

「おいタケシ! 仕事前に面倒起こすんじゃねーよ!」

タケシは二人のもっと厳つい男に取り押さえられている。

同時にあたしは後ろへ引かれ、何かに支えられた。

「サエ!」

頭上から聞こえたのは、マモルの声。

見上げると怖い顔をして息を切らしている。

「サエ、もう大丈夫だから……!」

上半身に巻き付く腕がキュッと締まると、絞られたように涙がじわりと漏れた。

「タケシ、逃げるぞ」

兄貴分と思われる男たちに連れられ、バタバタ去っていくタケシ。

直後、視界に入ってきたのは二人の警官だった。

誰かが呼んでくれたらしい。

「サエ……ごめん。一人にして、ごめん」

涙ぐんでいるマモルの声が全身に沁みる。

切なくて、情けなくて、あたしはただしっかりとこいつにしがみついた。

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