ゲイな彼と札束
その後少しだけ警官と話をした。
警官たちは本当にいい奴らで、あたしにこれ以上の危険が及ばないよう色々聞き出そうとしていたが、叩けばたくさんホコリの出る身ゆえ、ぶっきらぼうにしかできなかった。
今まで警察は敵だと思っていたけれど、彼らは本当に市民を守るために働いているのだと、初めて理解した。
その後、タクシーで帰宅。
家に着いた途端、頭や顔、腕がどんどん痛みだして、マモルに支えられながらリビングのソファーに横たわる。
タケシと再会するなんて想定外だった。
住まいも職場も足立区のあいつが、中野に現れるなんて想像もしてなかった。
「サエ、顔冷やそう」
「いいよ、これくらい」
「よくないだろ」
「いいからほっとけよ」
痛さにイライラして、優しくしてくれるマモルに当たってしまう。
あたしは本当にしょうもない女だ。
心配をかけて申し訳ない。
でも頼んでないし。
こんなあたしを拾ったこいつが悪いんだし。
ああ、どうしてこんなふうにしか考えられないのだろう。
気まずくなったあたしは立ち上がり、浴室へと向かった。
地べたに転がって汚れた体を、そしてタケシに触れられた体を洗い流したかった。
いろんなところが痛い。
ちくしょう、これも報いかよ。
あとどれだけ殴られたら自分の罪を洗い流せるんだろう。
シャワーの湯が腕の擦り傷に沁みる。
だけどそれに構わず、強く体を擦って洗った。
そうすれば、少しはあたしの罪が削ぎ落とせるような気がした。