ゲイな彼と札束

捨て犬のような目をした彼は、あたしを見るなり眉間にしわを寄せる。

最新家電の中に佇む傷だらけの女がよっぽど珍しいらしい。

「なんだよ」

あたしが睨みを効かせても、捨て犬男は気まずそうに目を逸らしたりしなかった。

「涼しいですね、ここ」

優しくて穏やかな声だった。

大型液晶テレビでは、ジョージが結婚相手の似顔絵を披露している。

ちらりと大画面に目を向けた彼は、またすぐにあたしの方を向き、

「血、出てますよ」

と優しく指摘する。

優しくされた経験の乏しいあたしは、急に泣きそうになった。

「なんか文句あんのかよ」

力なく噛みつく。

彼はジーパンのポケットから街で配られている広告的なポケットティッシュを取り出し、あたしの膝をそっと拭う。

傷に触れてピリッと痛んだ。



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