ゲイな彼と札束
閉じかけていた目が開く。
眠気はどこかに行ってしまった。
「今日、新宿に行く前に契約して、中野に戻った時、これを取りに行ってたんだ」
それであの時、あたしを待たせてどこかへ行ったのか。
別に詮索するつもりはないし、あたしに隠したいこともあるだろうから、特に気にしていなかった。
でも、まさかあたしの携帯を契約しに行ってたなんて。
「連絡取れないと不便だろ? 後からビックリさせたくて一人で取りに行ったけど、あんなことになるくらいなら、正直に話して一緒に取りに行くべきだったね」
そして、ごめんと小さく謝った。
マモルが謝る必要なんて、何ひとつないのに。
「ありがと……」
心が温かくなるというより、熱くなった。
あたし、本当にこの電話を使っていいの?
「俺の番号とアドレスはもう登録してあるから。あ、使い方わかる?」
「うん、一応」
操作をして、アドレス帳の画面を開く。
あ行から一つ右にスライドすると、
『NO.000 加藤 護』
と表示されていた。