ゲイな彼と札束
こいつの優しさはじんと胸にくる。
声と一緒で、いやらしく優しい。
大事にされてるみたいで、くすぐったい。
「なんかあたし、もらってばっか」
今までは何かをもらう代わりに体を差し出せたけど、マモルはゲイだ。
「出かける前にも言ったでしょ。俺はサエがいると助かるんだ」
「調査の話?」
「そう。彼氏としては携帯くらい持っててほしいし」
「彼氏……」
なんだか少し怖い。
バカなあたしは、自分が愛されているんだと勘違いしてしまいそうだ。
「ねえ、サエ」
「ん?」
「もう独りでいる必要、ないんだからね」
「……は?」
何言ってんだ、こいつ。
今までだって、誰かの助けを借りながら生きてきたというのに。
独りって。
妙に胸に刺さる。
「生きるのに必死にならなくたって、暫くはここで俺とゆっくり暮らせばいい」
生きるのに必死になって何が悪い。
この世は食って食われて、互いに身を削りながら命を繋ぐものじゃないのか。
「あたしのことなんて何も知らないくせに、何言ってんだよ。危なっかしいな。だから男に騙されるんだ」