ゲイな彼と札束
暴力クソ親父から逃げるために、あたしは故郷も友人も処女も、全て捨てて地元を飛び出した。
電車を乗り継ぎ2日かけて東京にたどり着くと、喋り方も歩き方も違う都会の人々が大勢行き交っていた。
誰も知らない。
誰にも知られていない。
あたしは孤独だけど自由だった。
これからここでどう生き抜くか。
あたしに出来たのは男に取り入ることだけだった。
愛だの恋だのは関係なく、生きていくために。
そして、孤独を紛らすために。
必死だった。
いつか自らの力で安楽な生活を手に入れられると信じるしかなかった。
家出少女のあたしだって、大人になれば世界が広がる。
開けた世界に飛び出せば、痛みと戦う日々からも解放される。
そう信じるしかなかった。
そんな日が来るまで、あたしは孤独でいることを覚悟していた。
それをお前が、解放してくれるというのか。
痛みだらけの孤独から救いだし、守り、穏やかな日々をもたらしてくれると。