ゲイな彼と札束
「サエのことは、これから色々覚えるよ」
マモルは笑って頭を撫でてきた。
子供扱いすんなよ。
なんて思っていたら、あたしはボロボロ涙を流していたようだ。
赤い携帯をぎゅっと握りしめるとポタリと手の甲にこぼれる。
「ちょっとカッコ付けて言ったけどさ、俺も不安定な生活してるし、必死なんだけどね」
「……甲斐性ねぇ彼氏だな」
悪態づいたが、情けない鼻声。
マモルは笑って涙を拭ってくれた。
「はは、まだ学生だし、その辺は勘弁してよ」
なら300万なんて簡単に差し出すんじゃねーよ。
明日あたしが300万持って逃げたらどうすんだ。
「ふん」
マモルは照れを含んだ膨れっ面のあたしの腰を抱き、自身に寄り掛からせる。
本当の恋人同士みたいで、ケーキを食べたときみたいな甘さが胸いっぱいに広がった。
ピリリリリ ピリリリリ
雰囲気を壊すようにマモルの携帯が鳴りだす。
画面を見て顔をしかめたマモルはあたしから少しだけ離れて、珍しく不機嫌な顔をして電話を耳に当てた。
「お久しぶりです、花巻さん」
ハナマキ?
「ええ、はい。約束通りに」
「わかりました。……隠してるんですね、土屋さんが妊娠していること」