ゲイな彼と札束
なんだかえらく込み入った話をしているようだ。
花巻とか土屋とか、あたしの知らないマモルの輪が垣間見えて複雑な気分になる。
妊娠だとか言ってるけど、マモルには縁のなさそうな話なのに。
「そうですか。そうですよね。……いえ、シンさんが幸せならそれでいいんです」
シンさん……高田真之介か。
マモルの元彼の。
どうやら電話は元彼関係らしい。
話は見えないが、きっとあたしは知る必要のないことだ。
興味のないふりをして携帯をいじる。
耳はマモルの会話に傾けたまま。
メールの起動ボタンを押すと、アドレスを設定しろという表示が出た。
アドレス、考えないとな。
英語とか全然わからないけど。
「わかってますよ。俺、彼女ならもういますから」
彼女?
それってあたしのことだよな。
思わず視線を向けると、マモルに再びグイッと引き寄せられた。
「ええ、助かります。はい、じゃあ失礼します」