ゲイな彼と札束

スーッと、こみ上げていた女性ホルモン的な何かが引いたのがわかる。

ふざけんなよ、おい。

元彼とあたしをダブらせんなよ。

まだそんなに好きなのかよ。

あきらめの悪いやつめ。

高田真之介の身代わりにされたあたしは、抱き返していた腕を下ろした。

優しく抱き締められてるのに違う人間の名前を呼ばれるなんて。

今お前が触れてるのは、そのクソ野郎じゃなくてあたしなのに。

静かに傷ついたあたしに、マモルは追い打ちをかける。

「やっぱり、ダメだ」

そう言って体を放し、頭を抱えてグシャグシャ掻き回す。

「何がダメなんだよ」

「俺、女じゃ、ダメなんだ」

自分が傷ついたような顔して、酷い男だな。

男とか女とか、この際関係ないだろ。

お前は今、あたしじゃダメだって言ったんだぞ。

キリキリチクチク痛むこの胸はどうしてくれんだよ。

タケシのビンタより効いたっつーの。

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