ゲイな彼と札束
マモルはまた深くため息をついて捨て犬のような顔になった。
さっきまで穏やかに笑っていたのに、こんな顔をさせる高田真之介が憎い。
「俺もバイならよかったのに」
そうポツリと呟き、自嘲の笑みを浮かべる。
なるほど、高田真之介はバイセクシャルか。
さしずめマモルは彼を女に取られた……ということだろう。
「バーカ。ノーマルならよかったんだよ」
「はは、そうだね」
「さっさと忘れちまえ」
「あれ、サエ、なんか怖い顔してるけど。どうしたの?」
「うっせーな。何でもねーよ」
あたしは立ち上がり、携帯を持って寝室に入った。
お前のせいだっつーの。
お前が身代わりにするから……。
どうせあたしは女だよ。
お前を抱いたりできねーよ。
さっきの抱擁を思い出しながら、あたしは慣れないアルファベットでメールアドレスを設定した。