ゲイな彼と札束

こんなにデカくて寝心地のいいベッド、同等品に買い換えるなら数万じゃ済まないぞ。

それはもったいない気もする。

「300万もしないでしょ」

「買えるからって、無駄なことに使うなよ。そういうの、無駄遣いっていうんだぞ」

「無駄かなぁ?」

「無駄だっつの。つーかこの部屋、元彼が住んでたの?」

「ううん。シンさんはずっと港区に住んでる」

「は? じゃあ3年の間、この部屋誰が住んでたの?」

「誰も」

わけがわからない。

「は? じゃあこの部屋、何に使ってたの?」

元々家賃収入目当てだったとか?

いや、だったらわざわざキングサイズのベッドなんて入れないはずだ。

マモルは仰向けになり、手を頭の後ろに組んだ。

「密会場所、的な?」

「密会って。隠れる必要ないだろ」

「いや、だからさ。言わせたいの?」

「は? 何を」

「はは。いいや、言う。ここはホテル代わりにしてたんだ」

ホテル?

首を傾げると、マモルは苦笑いして言った。

「男が二人、同じ部屋に泊まるっておかしいでしょ」

「え?」

「率直に言うと、ここでエッチしてました」

ああ、そう。

つまり、ホテルって、ラブホテル代わりってことか。

確かに男二人じゃ入りにくいんだろうけど。

だからって、そのためだけに部屋を買うってどれだけリッチなんだ。

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