ゲイな彼と札束

洗面所のほうから歯磨きをする音が聞こえ始めた。

あたしはベッドに戻り、マモルより授かった携帯で遊ぶ。

暫くゲームなんかをやっていると、マモルが寝室に戻ってきた。

「じゃ、行ってくるね」

「あーはいはい。行ってきな」

さっき図星を付かれた照れもあって、ぶっきらぼうに応える。

「はは。彼女なら可愛らしくいってらっしゃいって言ってよ」

なんだよ。

そんなこっぱずかしいこと……。

「いってらっしゃい」

頑張った。

これがメールなら、絶対最後にハートマークついてたぞ。

こんな言い方、初めてしたっつーの。

それなのに、マモルは大爆笑。

あたしは腹が立って、こいつの枕を投げつけてやった。

枕はあっけなく細い腕にキャッチされてしまい、フワッとベッドに戻ってきた。

マモルは満足そうに出かけていった。

なんだよ、恥ずかしいな。

悔しいから後で変な画像でも送りつけてやろう。

マモルなんか、電車の中で吹き出して恥ずかしい思いをしてしまえ。

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