ゲイな彼と札束

マモルが出掛けた後、暫くは携帯でゲームをして遊んでいたが、このベッドに高田真之介との思い出が詰まっていることを思い出し、寝転がっているのがイヤになった。

ベッド自体は気に入っているし、ここで男同士がちちくり合っていたからって気持ち悪いとも思わないが、悔しいのだ。

要は嫉妬である。

そんな自分が情けなくてリビングへと移動。

思えばこの物件自体、思い出の部屋である。

複雑な気持ちを発散するため、あたしも今日は久しぶりに出かけてみることにした。

顔を洗って歯を磨いて、マモルが買ってくれた服に身を包み、マモルが買ってくれた化粧品で軽く顔を作る。

タケシの一件がトラウマになってあまり外には出ていなかったが、今はそれよりも高田真之介の気配に嫉妬し続ける方が嫌だった。

一歩外に出るとむせ返るほどの熱気に包まれ、あたしは早くも外出したことを後悔した。

冷房の効いた部屋に引きこもっていたから、すっかり暑さに弱くなっている。

駅の方に向かうと、何かの祭りの準備が行われている。

タケシの本業は的屋だ。

本業の仕事がないときは、カタギでない雑用やらカタギな雑用やらで生計を立てている。

あの日、あいつは仕事のためにここにいた。

祭りの準備が行われているということは、今回は的屋の仕事か。

きっとこの露店のどこかにいる。

足が勝手に小走りになった。

全身に鳥肌がたっている。

この間のような偶然がまた起きないとも言い切れない。

見つかったりする前に、早くこの場から逃げよう。


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