ゲイな彼と札束

あたしに300万円という大金は扱えないことがわかったからか、先日マモルは10万円の小遣いを手渡してきた。

「これなら財布にも入るでしょ」

それでもなんだか気持ちが悪くて、結局5万だけ受け取った。

Suicaに1万円をチャージすると、ちょっとリッチな気分。

改札を抜けてホームに上がって、Suicaのカードを使い、自販機でお茶を買ってみた。

マモルのように爽やかで、ホッとする味がした。

あいつはあたしに、体も何も求めない。

与えられたミッションは、ただあの部屋で一緒に暮らすことだけ。

一日中テレビを見ていてもいいし、ベッドでゴロゴロしていてもいい。

必要なものは何でも買い与えられ、家事はゆるく二人で分担。

あたしは完全に甘やかされている。

日に日にそれではいけないという気になって、あたしはとりあえず職探しをしようと思った。

仕事なんて、売りや的屋の手伝い、そして怪しいバッグの運び屋くらいしかしたことがない。

バカでまともに働いたことのないあたしに何ができるのだろう。

考えながら、再び新宿に降り立った。

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