ゲイな彼と札束

中野に戻った。

祭りの準備で街は更に賑わっており、あたしは逃げるようにマンションへ向かう。

避けた甲斐があってか、タケシに会うことはなかった。

汗だくでマンションのドアを開けると、しんと重い空気が漂っていた。

マモルはまだ帰宅していないようだ。

あたしはリビングのエアコンを入れて、バッグに詰めていたティッシュとお茶を取り出す。

さて、どれにしようか。

タバコに火をつけ、テーブルにティッシュを並べる。

うーん、カラフル。

やっぱ体を売るよりキャバクラが安全か?

でも、あたしに客を喜ばせる話なんてできるのだろうか。

酒だって、飲んだことくらいはあるけど強くない。

無理だな、こりゃ。

風俗系の方が、当然だが給料は高い。

でも売り一回に比べりゃ安い。

働くって、そういうことなんだな。

300万の現ナマとか見てたから、すっかり金銭感覚がおかしくなってる気がするけど、思えばコンビニの時給なんて900円だ。

マモルがあたしのために用意してくれた携帯で調べたが、親の暴力で家出した少女は、2009年現在、売春婦になるケースが多いらしい。

そもそもあたしは体を売った代金を元手に家出をしたし、世話になる代わりに性的なリクエストにはできる限り応えてきた。

その代償として病気をもらったり妊娠したりして辛い思いもしたが、加速していく親父の加虐性を思えば、お互いのためにも、このまま東京にいる方がいいと思っている。

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