ゲイな彼と札束

テーブルに放置されている295万円を眺めると、もらってきたティッシュがアホらしくなってきた。

エアコンが効いてきて、汗だくの体と労働に対する意欲が冷めてゆく。

これではいけない。

「汗、流そう……」

あたしはゆっくり立ち上がり、浴室へ向かった。

シャワーを浴びてリビングに戻ると、マモルが帰宅していた。

「あ、おかえりー」

濡れた髪をタオルに包み、エアコンの前に移動。

「ただいま」がない。

気になって目を向けるとマモルはソファーに腰を下ろしてテーブルを、正確にはあたしがもらってきたティッシュを眺めている。

「サエ、これ何のコレクション?」

「コレクションじゃないよ。就職活動」

冷たい風を顔に当てると、スーッと心地よい清涼感が全身に巡る。

しかしその快感は、ドスドス足音を立ててこちらにやって来たマモルに遮られてしまった。

「就職活動? これが?」

彼を避けて冷風を浴びんとするが、腕を掴まれ阻止される。

外の熱気がまだ抜けないのか、マモルの手が、いやに熱い。

珍しくマモルが怒っている。

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