ゲイな彼と札束
マモルは手に力を込めたままため息をついた。
「俺、サエには不自由させてないつもり」
「自由とか不自由とか、関係な――」
「サエはきっと俺に借り作ってるような気でいるのかもしれないけど!」
あたしの言葉を遮ってまで発せられた言葉がいつもより強気で、図星で、ビクッとした。
ビビったんじゃねーし。
驚いただけだし。
「大事な体を安く売るくらいなら、家でじっとしてろ。俺の隣で大人しくしてるのを仕事だと思え」
なんだよ、大事な体って。
生まれてこのかた、この体を大事に扱ったことなんてない。
大事に扱われたことだってない。
マモルはいつの間にかあたしの腕を強く握っていることに気付き、ふっと腕から手を離した。
滞っていた場所に血液がめぐりだす。
「大体、キャバクラだろうが風俗だろうが、ちゃんとした店なら身分証明は必要だろ。提出を求めないのは危ない店だよ」
マモルの言うことはもっともだ。
でも、あたしはそれを承知でそういう店を探している。
いつかマモルの元を離れるとき、ちゃんと自分の足で立っていられるように。