ゲイな彼と札束
二人無言でコーヒーをすする。
ケンカの後で、ちょっと気まずい。
マモルは優しいから、自分が本当に悪かったような気がして嫌な気分だ。
先に言葉を発したのはマモルだった。
「タバコ、吸わないの?」
言ってテレビの電源を入れた。
「今はいい」
大画面に映し出されたのは、ドラマの再放送。
最新映画の宣伝なのか、映画主演俳優、松島ジョージのドラマだ。
中学の頃、あたしも毎週見ていた。
松島ジョージは今乗りに乗っている俳優の一人だ。
この間一般人女性との結婚を発表して、さらに全国の関心を得ている。
「俺も就活、やらなきゃな」
マモルはあたしが集めたティッシュを重ね、片付けるように札束の上に乗せた。
「バイト?」
リッチな元カレからもらった札束がここにあるし、これだけあればしばらくは必要ないのでは。
「いや、卒業した後の仕事だよ」
ああ、そっちか。
いずれ元カレの支援はなくなるし、ちゃんと職に就かねばならない。
「まだ夏なのに」
あたしの言葉にマモルが嘲笑を浮かべる。
「大学生なら、もう決まってないと危ない時期なんだよ」
……知らなかった。
仕方ないじゃん。
高校にも行かなかったのだから。