ゲイな彼と札束



俺、ずっとテレビ番組を作る仕事をしたいって思ってて、大学入ってすぐに制作会社でバイトを始めたんだ。

テレビだけじゃなくて、映画とかラジオとかイベントとか、いろいろやってる会社で。

バイトの俺はあんまりテレビ番組には関われなかったけど、他の仕事でも勉強になるし、いずれはこの会社に就職するつもりで、時間が許す限り働いてた。

シンさんと出会ったのは、新作映画のPRイベントのスタッフとして、裏方をやってるとき。

わかる人にはわかるんだろうね。

ゲイだって見抜かれて、口説かれて。

すぐに付き合い始めた。

シンさん、売れっ子だからさ。

何かしたらすぐにバレるんだよ。

ずっとシンさんを追いかけてる記者の何人かには、バイだってことはバレてたみたい。

だから俺とは慎重に付き合いたいってことで、俺名義でマンション買ったりいろいろ工作したりした。

写真を撮られないように、外で会ったりはほとんどしなかったし、デートはほとんどこの部屋。

でも、勘のいい記者もいてさ。

俺とこのマンションのこと、バレちゃったんだ。

まあ、そこは当然のように事務所が金でもみ消して、大事には至らなかったんだけど。

今、映画とかあってかなり大事なときでしょ。

そういう時期って、金になるから狙われやすいみたいだね。

所属事務所としては、どうしてもスキャンダルを避けたいわけだし。

信用のない記者にまで男と付き合ってるなんてバレたら、さすがに手は回らないし。

話題にはなるかもしれないけど、イメージに傷がつくし、今後のオファーに影響が出る。

芸能記者って、ほんとニッチな商売してるよね。

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