ゲイな彼と札束

マモルは今朝、このベッドを買い換えたいと言っていた。

「松島ジョージが使っていた」というプレミア付きのキングサイズ。

熱狂的ジョージマニアに売れば、それなりに儲かるだろう。

あたしはケータイを開き、オークションの画面を開いてみる。

しかし開いたところですぐに携帯を手放した。

「アホらしい」

ベッド一つ捨てたところで思い出がなくなるかっつーんだよ。

マモルが使わないなら、あたし一人で使ってやる。

冷房の効いていない寝室は日が傾いた今でもじめっと暑いが、大の字になってもベッドの隅に置いてあるエアコンのリモコンには手が届かなかった。

諦めて目を閉じると、微かにシャワーの音が聞こえる。

歩き回ったり、ケンカしたり、重い話を聞いたり……と、心身共に疲れていた。

マモルが浴室から出た頃には、ろくに飯も食っていないのに、大の字のまますっかり眠ってしまっていた。

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