ゲイな彼と札束
しばらく歩いた先にある公園で膝を洗い、さっきもらった風俗嬢募集のティッシュで水気を拭う。
膝を擦りむいたのは、不安定なヒールでダッシュして転んだからだった。
捨ていぬ男からもらった絆創膏を開封。
あたしの傷は擦り幅が広すぎて、全然足りない。
なんだよ、使えねーな。
チッと舌打ちして、地面に絆創膏を捨てる。
思いっきり投げつけたのに、それはふわっと風に煽られながらゆっくりと着陸した。
だらりとベンチの背もたれに寄りかかる。
あの男の優しさは、無駄になった。
何を持って出てきたっけ。
あたしは自分の荷物を確認する。
小さなCOACHのバッグには、財布とタバコとライター、そして残金千円未満のSuicaしか入ってない。
Tシャツにデニムのショートパンツ。
ブラにパンツにピンヒールのサンダル。
財布には5千円札が一枚と小銭。
あたしの全財産、これだけか。