ゲイな彼と札束

どんな風に誘われたんだろう。

今度、二人で遊びにいかない?

一緒に食事でもどうかな?

行きたいところがあるんだけど、ついてきてくれない?

マモルくんの部屋、遊びに行ってもいい?

きっと誘ってきた女だってこいつに恋心を抱き、勇気を出して誘ったはずだ。

きっと、ゲイだとは知らず。

たとえ顔がよかろうが、スタイルがよかろうが、性格がよかろうが、女として生まれてきた時点でこいつを射止めることはできない。

それが一緒に暮らしている「彼女」だとしても。

「サエ、今度デートしようか」

想定外の言葉に、あたしはとうとうから揚げを噴き出した。

慌ててティッシュで片付けると、マモルはそんなあたしの様子を笑った。

「いいじゃん、たまには」

「デートって、お前が言うと色気がない」

「そう?」

そうだよ。

デートなんかしたって、あたしたちの関係に何か進展があるわけじゃない。

「サエ、どこ行きたい? 遊園地とか動物園? 女の子とって、難しいね」

知るかよ。

ていうかデートは決定かよ。

観覧車の頂上でチューすることもないし、可愛い動物を見てはしゃぐようなキャラでもないし。

デートっていうのかよ、そんなの。

「男同士ならどこ行くの?」

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