†Dragon Guardian†
「壱加に対して変な言い
がかりをつけたり、必死
の訴えにも一向に耳を貸
そうともしなかったり、
極めつけはさなえちゃん
です!!火災発生時に崩れ
落ちた私を真っ先に奮い
立たせてくださったのは
紛れもなく彼女ですっ!!
それなのに……」
「それでも、あんな場面
目の当たりにしちゃ仕方
ねぇんじゃあ」
壱加は半ば諦めたような
口振りで話すと、弥嘉は
突如鋭い視線を向けた。
「“普段通り”のさなえ
ちゃんならあんなことを
絶対に言うはずがありま
せん!!彼女はいつだって
私が大切にしている事を
共に守ろうする心優しき
方なのですからっ!!」
「――――!!!!!!!!!!」
弥嘉のすさまじい剣幕に
気圧されて、壱加は暫し
閉口するほかなかった。
***
「……とすると性格変化
の能力かぁ~?んなもん
聞いたことねぇぞ」
壱加は若干苛立ちながら
独り言を漏らしていた。
すると弥嘉は、何かひら
めいたのかいきなり彼の
方へと身を乗り出した。
「あのっ!!もしかしたら
記憶操作ではないでしょ
うか?一時的にある部分
の記憶だけ抜き取り別の
ものと入れ替えるとか。
そうでなければ、彼女が
あそこまで壱加を蔑ろに
する訳がありません!!」
「なるほど!!その力なら
前に聞いたことがある!!
確か俺の知っている中で
一人だけそれに該当する
奴がいたっけな」
「ど、どちら様で!?」
弥嘉は興奮のあまり幾度
となく壱加の肩を激しく
揺さぶった。
一方壱加は目が回りそう
なのを必死に堪えながら
静かに言葉を紡いだ。
「孤高の女王、睦月様」
彼の言葉が途切れた瞬間
弥嘉の背中に冷たい風が
吹き抜けていった。